効率時間を費やして何らかの作業に当たるのなら、出来れば高効率で成し遂げたいとは誰もが考える。通常2時間かかる宿題を1時間で終えれば、残り1時間を昼寝に充てたり遊びに使う、予習復習に費やすなど、有意義に使えるからだ。またミスを減らしてリソースを有効に使いこなすことも、効率を高める要素となる。「生産性の向上」は誰にとっても魔法のキーワードであり、憧れの対象となるが、一方で間違った切り口が数多く伝播していることでも知られている。例えば「今日中に仕上げればキリが良くなるので、眠くても夜遅くまで起きて完成させてしまおう。きっと能率的だ」と考え、実行した人も多いのではないだろうか。【Dumb Little Man】では7つの「良かれと思っているだろうが、生産性向上のためにはむしろ避けるべき事柄」を挙げている。これらを避けるだけでも、随分と生産性は上がるというものである。




1:睡眠時間のカット
睡眠不足日常生活の流れに加え、何か追加の作業が課せられた場合(例えば「明日突然試験を言い渡され、範囲の見直しが必要」「入力していたファイルが破損し、来週締切の仕事のうち今日のノルマ分を打ち直す羽目になった」など)、睡眠時間をカットするのが一番シンプル。

しかし多くの人が経験しているように、「カットした睡眠時間」は確実に、その作業中、そしてその後しばらく間、集中力を欠き、うつらうつらとしてしまう事態を招いてしまう。結局、睡眠時間を削って得られた時間以上に、多くの時間の生産性減少を招くため、作業量の総量は減りかねない(眠い時の作業はミスも多くなることを忘れてはいけない)。さらに中長期的な睡眠不足は、体の不調すら招いてしまうだろう。

2:マルチタスク
マルチタスクは素敵な手法。何しろ1つの事柄をこなす時間で2つ(以上)の事柄が出来る(と思われている)のだから。例えば職場で環境音楽を流す・掃除をしながらラジオを聴くように、何か具体的な作業をする環境下で精神的な作業を行うことは、有効な時間の使い方といえる。しかし具体的な作業のマルチタスクは、往々にして集中を欠き、両者とも中途半端に終わってしまう。例えば「電子メールを逐次チェックして中身を読み、レスをしながら、論文のまとめを書き連ねる」のは、効率的には避けるべき事例。

複数の具体的作業を同時にこなさないといけない場合は、集中力を個々に投入し、分散しないことが必要。例えば「メールチェックは1時間に1度のみ」とし、チェックが終わったら元の作業にすっぱりと切り替える「心の中のスイッチ」のオン・オフが欠かせない。

3:自分で全部の事柄を済まそうとする
「仕事を上手くこなしたいのなら、全部を自分でやることだ」。そう信じている人も多い。何も職場の仕事や学校での行事に限らず、日々の生活でも、その考えに縛られている人は山ほど居る。確かにその時点では高い生産性を維持できるかもしれないが、それは同時に周囲の人の成長機会を奪う事にもつながる。

身の回りの人への権限移譲、依頼は短期的には生産性を低くしかねないが(彼ら・彼女らは素人なのだから当然)、それは同時にタスクラインを増やすことにもつながる。経験を積ませて部下や家族を信頼できるタスクラインとして構築できれば、職場全体、学校全体、家族内の生産性は上がり、さらには自分自身の生産性も向上していく。

4:数字に過度な注力を行う
数字具体的な数字には魔力がある。今週は何キロ走り通した、何件もの契約を結ぶことができた、などのように数字を明確化すれば、自分の成し得たことがはっきりと把握でき、充実感に結び付くからだ。しかしその数字ばかりに目を奪われていると、生産性を軽視しかねる事態に陥ってしまう。

直前の「3.」が良い例で、「自分で全部やれば3日で済むのに、部下に任せるとマニュアルの作成や仕様の説明などもしなければならないし、慣れていないから1週間かかってしまう」場合、数字だけを追い求めると「ならば自分で全部やってしまおう」の選択肢しか選ばなくなる。数字ばかりを追いかけていると、中長期的な視野での思考が出来なくなる。

5:作業をしている机の上で食事をする
忙しい時にはファストフード片手に、作業机の上で食事をしてしまいがち。食堂へ足を運んだり、食卓に移動する時間すら惜しい、時間が節約できることで「生産性を高められる」と考えてしまう。食事をしながらウェブのニュースチェック、メールの確認まで出来る。なんと素晴らしい。

しかし食事は単に食物を体に納めるだけでなく、肉体的・精神的にリフレッシュする、気分転換となるひとときである事を忘れてはならない。作業机の上での食事は、仕事時間の継続。当然、疲れも溜まってしまう。

6:頻繁なメールの確認
メール例えば電子メールのやりとりそのものを主業務(メールによるカスタマーサポートなど)としているのでない限り、メーラー(メールを送受信するアプリケーション)を10分起きにチェックする必要は無い。また最近のメーラーに実装されている「メールが到着するたびに画面上に吹き出しなどが表示されて到着を知らせる」機能を作動させる理由は見当たらない。

高頻度で到着するメールの大部分は、他愛も無い内容か、あるいは単なるスパム・営業メール。そして本当に重要な内容ならば、数分・数十分の単位で返答がない場合、手元の携帯電話に連絡が来るはずだ。

7:24時間をフルタイムで使い倒す
「1日は24時間しか無い。睡眠時間を除けばその2/3しか自由に行動できない。仕事(学業)に食事に副業に。スケジュールがずれたら残業もバリバリ。余った時間はさらなるアイディアの模索や資料集めに没頭しよう。休日出勤だって積極的に行うぞ」。そしてシステム手帳、あるいはスケジューラーはいつも真黒。確かにここまでハッスルして注力すれば、短期的な生産性は向上し、高効率で作業を回すことができる。

しかしフル稼働の継続は、必ずどこかに過負荷をもたらすことになる。ストレスと疲労が溜まり、気がつけば心身ともにボロボロになり、病院通いが日課となりかねない。過度の注力が起因による健康状態の悪化や病気で、通院(さらには入院の可能性もある)、病症によって集中力を欠いたり時間を失えば、結局生産性は著しく低下してしまう。すべての物事の優先順位を下げて生産性の向上を「短期的に」上げようとすれば、往々にして「中長期的に」下げてしまう結果をもたらすことになる。

近道をしていたつもりが、実は遠回りだったこと。良くある話だが、本人は「遠回り」になかなか気がつかないから始末が悪い。今件の「してはいけない7つの事柄」の指摘に、ハッとなる人も多いに違いない(当方含む)。一つでも気が付き、改善を成し遂げれば、短期的には遠回りのように見えるものの、長い目で見れば効率良い、生産的な時間を過ごせるようになるはずだ。


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