

理解もせずに助言を盲信するのは「思考停止」という愚か者の証。助言を信じること自体が間違っているのではなく、その内容を自分自身で「理解せずに」信用することが間違いの元となる。
「信頼している人の言葉を疑うなど失礼だ」と考えるかもしれない。また「細かい事をいちいち考察してたらキリが無い」といった意見もあるだろう。しかし自分自身で確かめていない、不完全な仮定に基づいた決定は、やはり(最終判断を自分自身でしたとしても、)不完全なものでしか無い。仮定の部分を少しでも自分で確証づけることで、意思決定は少しずつ良くなっていく。
2.リサーチをしてみる
決定事項を構成する要素について、少しでも疑問に思った事、疑わしい事、判断に迷う事があれば、インターネット上でリサーチをかけてみる。調べたい物事をそのまま検索して専門家のサイトやWikipediaなどの電子辞書サイトを調べるもよし、YouTubeなどの動画共有サイトで実際の様子を確認してみるもよし、【使い方が分からない人につぶやきたい、ツイッターの9つの賢い利用法】などでも触れているが、ソーシャルメディア上で素直に質問をしてみるのも良いだろう。
もちろんインターネット上の情報がすべて正しいわけではない。間違い、デマ、見解の違いなど、真実にたどり着けない場合もある。しかし例えば誠意と見識と実績のある専門家のサイトを情報源とすることで、そのリスクは最小限に抑えることができる。少なくとも調べずもせずに決定を下し、ミスをしてしまい、後になって「その件について、知りませんでした」と言い訳する事態に陥ることは無くなる。

自分が「絶対にこれが正しい。反対意見は間違っているから聞く耳持たない」では無く、何度となく耳を傾ける。もちろんこれは自分の主張を曲げる、あるいは妥協のポーズを見せるかのようであり、あまり気分の良いものでは無い。相手の意見を聞き、場合によっては言葉のやりとり(真摯な意見交換であり、ケンカ腰の討論では無い)を交わすことで
「相手の主張の根拠を知り、より冷静に意思交換ができる」
「自分自身の考えている事に対し、より確かな、さらにはこれまでに無かった新しい考えや事実を見出だし、付加できるかもしれない」
「相手の意見も合わせてよく検討してみると、一部、あるいはかなりの部分で相手の意見の方がより良いものだと認識する可能性がある」
の3点について便益を得ることが出来る。
もちろん三つ目は「自分の考えを変える」事である。あまり面白い話では無いし、それこそが相手との議論を避けたくなる理由でもある。しかし頑なに自分の意見を固持するのは、単なるおバカな話に過ぎない。知識・情報不足は決定的ダメージに結び付き得る。相手のサイドからの情報も活用すると考えれば、それほど(心理的に)イヤな話では無い。それとも自分が今胸に抱いているプランは、反対意見の情報くらいで揺らぐ、頼りないものなのだろうか。
4.人間には「偏見」があることを認識する
他の人から助言を求めるのは決して悪い事ではない。しかし何の感情も持たずに情報を淡々と伝えるコンピューターを相手にしていない以上、何らかのバイアス(経験や意見、そして偏見)が加味されていることを忘れてはならない。
特に経験談の場合は、その人自身が実際に体験しただけに貴重な、そして有益な意見として参考にしがち(口コミが良い例)。しかしその人の事例が、すべて他の人と同じとは限らない。例えばある食堂で「ご飯がいつも大盛りでお腹一杯になるんだ。お得だよ」とアドバイスしてくれる人がいても、食堂の店員がその人をお気に入りだからオマケしてくれるのかもしれないし、体格や格好を見て調整しているのかもしれない。あるいは単にその人が小食で、普通盛りでもお腹一杯になるだけなのかもしれない。しかし数十人が一様に「あの食堂はご飯が山盛りだ」と話してくれるのなら、それは恐らく真実なのだろう。

孫氏の「兵は拙速を尊ぶ」の言葉にもあるが、物事を素早く考えるのは悪いことではない。しかし「素早く考える」と「素早く行動」するのは別の意味を持つ。前者は「解決した際の結論や様々な想定をすぐに検討でき」、より賢明な姿勢で臨めることを意味するが、後者は単に「よく考えずにただ暴走する」のと同意でしか無い。
多数のオプションを想定することで、より良い可能性を選択できる。しかし一度突っ走ってしまえば、その選択肢が「ハズレ」だった場合、実害を受けてしまうことになる。例えるなら、将棋で次の一手を打つ際に色々な先読みをして長考するか、それとも思い付きで一手を打ち、それが良くない手だった場合は後々までそのダメージが尾を引くようなもの。
「ああ、なんて素晴らしいアイディアだ」と思いついた案でも、一度立ち止まって再考する時間を設けること。「ひらめいた!」とアルキメデスのように風呂から裸で飛び出すような妙案だと思い込んでいても、その思い込みが様々な問題点を覆い隠してしまう事も良くある話。念入りに時間をたっぷりとかけて完全な検証をする必要はないが、自分の感情的な思い込みをクールダウンさせるくらいの時間とチェックは常日頃から用意するよう心がけるべきだ。
例えば「今日の夕食は何にしようか」という気軽な、そして万一ミスチョイスをしても大きなダメージを受けないような意思決定なら、わざわざ今件のような点を適用させる必要は無い。しかしある一定以上の重要さを持つ意思判断の場面……例えば携帯電話の購入、大学の専攻科目や入会するサークルの選択、仕事の場面で企画案の判断……では、全部とはいわず、一つや二つでも良いから思い出し、自分自身に適用させてみよう。きっと何の予備知識も無い時と比べると、良い意思決定ができるはずだ。
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